今日は晴天。
ほとんど無風――といって肌身にそれを感じないだけで、
木立へ目を遣れば、葉っぱの各々は、
呼吸するかに、絶えず、微かに動揺している。
昨晩、エンリコ・カルーソー(テノール)の歌う
オペラのアリアを一曲、題名は「耳に残る君の声」。
大抵の人が覚えのあるメロディーではないか?
録音はほぼ100年前。
CD化されてもノイズは伴い、
伴奏のオーケストラの響きは、フニャフニャとなんとも心許ない。
しかし、一旦、カルーソーの声が登場すると、
その時の隔たりが、一気に無効となる。
昨日録音されたのではと我が耳を疑うほどの張りと響き。
そして、歌唱を貫く確固とした精神性。
時間にして4分の曲だが、
私はその一曲でプレーヤーを止めてしまう。
もうこれ以上は入らない。
光と懐かしさで、内面世界は溢れ返っている。
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