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〈ウヂ(氏)と カバネ(姓)〉 引用
池見 隆雄 2019/6/14(金)13:40:38 No.20190614123436 削除
 我が国の古代に、ウヂ・カバネの称号は設けられていたが、
 それらをも表記すべき文字が存在しなかった。
 自力でそれを創出するに至らず、漢字を輸入。
 ウヂ・カバネにもそれぞれ、「氏」・「姓」字が当てられた。

 といって、それら我が国の言葉と、外国の文字との間には、
 当然ながら意味指示に差違が認められ、
 またその差違が微妙なため、いざ表記するにも読むにも、
 少なからず戸惑いが生じがちだった。

 私自身、『古事記傳』を読み進めつつ、
 しばしば現れるウヂ(氏)とカバネ(姓)の相違が釈然とせず、
 古語辞典を引いたところで、
 どちらの項にも変わり映えしない説明が与えられているのみ。

 そして、『傳』も三十九之巻(『古事記』「允恭天皇の段」に対応)に入って、
 ようやく宣長の、両者判別の詳説によって、
 ほぼ納得することが出来たのであった。

 以下は、宣長説くところへ対する、拙い現代語訳。
 但し、〔 〕内は彼自身の割註、( )内は私の付加。


 ウヂは、常識的に誰もが承知している通りのものと、思ってもらってよい。
 〔例えば源・平・藤原などの類がそうだ〕。

 カバネというのは、それらウヂを尊んだ号(な)であるから、
 それ即ちウヂでもあるわけだ〔源・平・藤原などはウヂであるけれども、
 それをカバネともいうのである〕。

 というのが、実はウヂそのものも、(朝廷がある一族を、何らかの理由で)
 賞賛する印(しるし)として授けたのであるからだ
 〔藤原などの言葉に賞賛のニュアンスは含まれてないが、
 授けた側は、賞賛を意図していたのである〕。

 また、朝臣(アソミ)・宿禰(スクネ)など、
 ウヂの下に着けて呼ぶものをも、カバネというのだ。
 これらはもとより、賛め尊ぶ号(な)である。
 ――ウヂとこれらの連結体をもカバネという
 〔藤原朝臣(フジワラノアソミ)・大伴宿禰(オホトモノスクネ)などのような〕。

 というわけで、ウヂというのは源・平・藤原の類に限り、
 〔朝臣・宿禰の類をウヂということはない〕
 それに対してカバネは、
 ウヂ、朝臣・宿禰の類、それらの連結体をも指す総称である。

 ウヂとカバネの差別は、大かた、以上で尽くしている。

 因みに、ウヂカバネとまとめていう場合、
 ウヂとカバネとを差別あるものとして並べてもおり、
 ただ何となくそうしてもいるものだ。
 (『古事記』「允恭天皇の段」の)本文中の「氏姓(ウヂカバネ)」は、
 それらどちらとみても差しつかえない。

 〔さて、ウヂに「氏」の漢字を当てるのはふさわしいが、
 カバネに「姓」の字は、ふさわしいところと、そうでないところとある。
 にも拘らず、一般に、ウヂカバネ各々の意味指示を、
 この「氏」・「姓」字によって分別しようとするので、
 (ウヂ・カバネの差別自体紛れやすいのに)
 大変紛らわしい事態になっているよう見受けられる。
 そこで次に、そのへんのことにつき、詳しく吟味してみよう。・・・〕

                                 (続く)

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