みんなの広場「こころのパレット」

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〈 回 復 〉 引用
池見 隆雄 2019/7/15(月)13:12:07 No.20190715124028 削除
 チビ(オス2歳。3匹の黒猫兄弟の長兄)が10日間行方をくらまし、
 次の日の夕方、やっと戻ってきた。

 私はほとんど再会を期していなかったが、
 読書を一区切りした目を、何気なく協会事務局の入り口に向けると、
 網戸の直ぐ向こう、踏み台の上にネコがうずくまっている。
 チビの普通なら、後脚で立ち上がって網をバリバリと引っ掻くのだが・・・。

 近寄ってみれば、まるで盲いたように両眼は固く閉じられており、
 口元も妙な具合に形が崩れている。
 目ヤニ、ヨダレ。

 戸を引いてやると、辛うじて中へ歩を運ぶ。
 背に当てた手が直かに骨にさわるかのようにやせている。

 翌々日、妻の協力を得て動物病院へ。
 例によって、まず大き目の洗濯ネットに封じ込め、
 キャリーバッグごと私の膝の上に乗せて。
 そのときちょうど、車外に雨滴が落ち始めた。

 ネコは衰弱しているからといって、診察台に乗せられれば
 恐怖からパニックになる結果、室内を逃げまどい、荒れ狂うことがあると、
 以前にその老医師から釘を刺されていたが、
 チビは、点滴の針を刺されるにも任せていた。

 その夜は初めて、事務局内で過ごさせた、
 食物と水を置き、また排泄用のシートを部屋の一隅に敷いて。
 (私の帰宅時には、天候に拘わらず、“庭猫”の彼を、必ず外に出すのを習慣としてきた。)

 翌朝、チビの具合、また排泄の具合に不安を覚えつつ、廊下側のドアを開ける。
 前夕は、事務机の椅子のクッションに半ば死んだように丸まっていた彼が、
 すぐ前に立っていて、か細い声で鳴く。
 食物を摂ろうとする欲求を覚えるくらいに回復しているのだ。

 彼は徐々に快方へ向かいつつある。
 それを目の当たりにさせて貰えるのは嬉しいことだ。
 一旦は死の淵に臨んだほどだったのだから尚更である。

 他の4匹の猫たちも何かと手が掛かるが、
 それぞれの個性的な形で、私の生活力に寄与してくれている。
 チビの回復を機に、
 跡絶えがちな私の文章にも、手をつけようかな。

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