私の妻が、協会猫のイチのために、
頼みもしないのに毛梳き用のブラシを買ってきた
――しばしば余計な食物(おやつの類)であるとか道具をもたらして、
私の手間を増させるのだ。
4,5回もブラシを掛けて貰ったイチには、
その心地良さが既にしっかりとインプットされているらしく、
昨夕、定時の餌を食べ終えて、協会の出入り口前の木陰に憩って(?)いる彼に、
「ゴシゴシしてやろうか」と声を掛けると、
暫しの間の後、何かを望むとき特有の細い高い声を発しながら、
私の傍らへ来てゴロンと横倒しになる。
頭から尻尾、喉元、手足の先端まで・・・・。
今年の1月半ば以降、イチの生活環境は変転を重ね、
恐らくそのストレスから、食物の摂取をほぼ拒否する具合で痩せ細ってしまい、
私は心配するやら、悩むやら。
ようやくこのひと月ばかり食欲が安定してき、
そこへブラッシングまで加えられて、
イチの黒い体毛が、今日は、清々とした光沢さえ放って見て取れる。
私はつい、「ホーッ」と長い息を吐いた。
協会猫――半野良の彼と、これからどこまで、付き合って行けるやら。 |