うちの二女は、福岡市動物園の獣医職についている。
先日、飼育員さんとタッグを組んで、キリンの首からの採血に成功した。
囲いの向こうから地上の餌箱へキリンが首を伸ばしたところで、
横合いから二女が、すばやく注射針をその血管に挿入する。
可愛らしげな表情のキリンだが、
その長く逞しい首に薙ぎ払われると、人間などひとたまりもない。
危険な動物といってよいのだ。
他の飼育員さんによって動画撮影され、
インスタグラムに投稿された採血の模様を、
私も、家内に見せて貰った。
そのプロセスにいちいち立ち会ったわけではないから、
彼らの労苦を私自身のものとして感得できるわけではないが、
動物との間に信頼関係を築くべく、段階的な接触と躾とが、
丹念に、あるいは根気強く積み重ねられたに違いあるまい。
どちらかと言えば活発な長女と三女とに挟まれて、
二女は、辛抱を選択せざるを得ない場面が多かった。
三児の親として余程でない限り、
私たち夫婦は、それを静観している他ない。
その他、彼女の半生の紆余曲折とそれにまつわる私たちの憂慮とが、
動画に対しつつ髣髴され、彼女へ、
「初めて〇〇(二女の名前)の仕事ぶりを見た。
しっかり獣医としての役目を果たしている」
とのみラインで伝える。
返信は、「見てくれたん」の一言。
今を生きている彼女の喜びと誇りとが、
さり気ない風となって私の胸底を吹きすぎた。 |