江別神社「宮司の独りよがり」

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バレンタイン事件 引用
江別神社宮司 2021/2/15(月)08:32:42 No.20210215074605 削除
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昨日は「バレンタインデー」でした。

こんなジジイにもいくつかチョコレートが届けられて、嬉しい思いをいたしました。

小生よりも喜んだのは、もちろん女房です。

「バレンタインデー」といえば、高校時代に生まれて初めてチョコレートを
頂きました。

その思い出を拙著に掲載したしましたが、この欄にも載せようと思いました。



・バレンタイン事件

あの日の朝、E別高校普通科に通う17歳のオレは、この日がバレンタインデーであることなどすっかり忘れて、
いつもように学校へ向かった。

玄関で目線よりも少し上の自分の下駄箱を開けると、突然「何か」がオレを襲った。

「何か」はオレの額に当たって、床に落ちた。

額に指をあてると、少し血がついていた。

床にある「何か」に目をやると、それはチョコレートの箱だった。

チョコレート箱には手紙が添えられてあった。

「誰だろう?」オレの胸はドックン、ドックンと高鳴った。

しかしすぐに現実の状況を把握もした。

こんなところを口の軽いクラスメートなんかに見られたら、どれ程からかわれるか分からない。

さいわい周りには誰もいなかった。

オレはすぐさまチョコレートと手紙を征服のポケットに押し込み、教室へ入った。

落ち着かない1時間目の授業が終わってトイレへ駆け込んだ。

手紙を開けてみると、オレと同じ2年生のS業科に通う彼女からのもので、内容は
「以前から好きだった、付き合ってほしい」ときれいな文字で書いてあった。

当時、オレの目線に入ってきている娘だったので、ある意味合点がいった。

何日かして「会って欲しい」と連絡があった。

放課後の薄暗い廊下で、初めて彼女と口をきいた。

何を話したかはよく覚えていない。

緊張して舞い上がっていたのと、これからどうすればいいのか迷っていたので、多分訳の分からないことを
口走っていたはずだ。

17歳の高校生の初々しいはずのデート、お互いの思いが伝わらないもどかしさが残った。

彼女の足元に当たった西陽、そこだけが赤く輝いていた。

あの時オレが欣喜したのはバレンタインデーに誰かからチョコレートを貰ったと言ことに対してであって、
彼女の思いに対してではなかったのだろう。

多分、オレは彼女と真剣に付き合う気持ちはなかったのだ、と思う。

しばらくの間、彼女とは交際している様なしていない様な中途半端な日々が続いた。

そんなある日の放課後、前庭で中学時代からの友人と話をしていると、我々の横を彼女が
通り過ぎた。

彼女はオレに?我々に?一瞥して足早に校門をくぐった。

友人は彼女を見つけるなり「アイツS業科のMというんだ。俺、アイツと付き合いたいと思っている」と
言った。

オレは「彼女はオレと付き合っている」とは言い切れず黙っていた。


秋になって、卒業アルバムの制作委員会が行われた。

製作委員は各クラスから2名が選ばれ、オレのクラスからは男子と女子、彼女のクラスからは上司2名が
委員となっていた。

委員でもないオレは彼女が彼女のクラスの委員であるとは全く知らずに、どういう訳か
第1回の委員会に出席した。

オレのクラスは「委員決め」などということに関して、極めていい加減なクラスだったのだ。

委員会でのオレは彼女に対して冷たかった。

オレのクラスから選ばれたもう一人のお喋りな女子に、彼女とオレのことは絶対に知られたくなかった。

彼女に対し「知らんぷり」を押し通し、とうとう一言も口を利かなかった。

煮え切れない態度のオレに愛想をつかしたのか、オレの友人と付き合い始めたのかは知らない。

彼女の進路も確かめないまま高校を卒業したオレは浪人生活を送ることとなった。

青りんごのような甘酸っぱい香り漂う、青春の1ページが幕を閉じた。


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