殊に今年に入っていから、
自宅で音楽を聴く環境が、なかなか調わない
――集合住宅の階下から伝わってくるモーターの重低音と振動。
鑑賞の機会・時間は顕著に減少している。
その情況に順応するためでもあろうか、近頃では、
聴こうという気持ち・意欲さえ、自覚しにくくなっている。
昨日の夕食後、妻へ、
「この頃、音楽を聴きにくい分、読書の楽しみが増しているよ」
ともらすと、間髪を入れず、
「じゃ、もう、CDは買わなくていいわね」
と応ずる。
CDを買い求めるのが、
長年、私の道楽みたいなものとよく知ってのこと。
――鑑賞への意欲が低下していても、
新譜の広告を見掛けなどすると、相変わらずそそられるところがある。
「歳取って、本が読みにくくなったときに、CDが役に立ってくれるさ」
「耳も悪くなっているかもしれないわよ」
妻は、やがて“意地悪ばあさん”になりおおせると、心に確信する。
いや、孫がいるのだから、既に、意地悪ばあさんだ。
音楽が聴けないというのは、私にはけっこう深刻な事態なので、
妻はそれを正面から受け止めるのが、辛いのだろうとも思う。 |