午(ひる)過ぎから、雨が降り出した。
この頃の雨にしては、
割り合い大人しい降り方だ。
暫くして、湿った土の臭いが、
協会の前の公園から届いてきた。
その臭いは、なぜか私の思いを、
自分の少年期へ向かわせる。
具体的にこういう出来事というのでなく、
肌で感じ取っていたその当時の空気へ、
とでもいうべきか。
それをイメージに託すとすれば、
しかるべき土壌から顔を覗(のぞ)かせている双葉を育むかのように、
小雨が降りかかる・・・・・。
少年期という私の双葉は、
“すくすく成長”とは裏腹だったけれど、
今もそれは、少しも損なわれてはいないのだと思う。
湿った土の臭いは、いわば私に、
不変の希望・成長を、喚(よ)びさます。
「まだまだこれから、これから」 と。
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