みんなの広場「こころのパレット」

||| ホームページ | タイトル一覧 |||

〈猫の手も借りたい〉 引用
池見 隆雄 2018/7/11(水)14:22:10 No.20180711134920 削除
 一昨日午前、降って湧いたような困惑事に直面し、仕事もろくに手につかない。
 息抜きに横になっても、
 心身就中(なかんずく)後頭部あたりに、混濁した緊張が漲っている
 ――過度の不安と対応している生理的反応か?

 それから僅かでも解放される術(すべ)として、
 最後の頼みの綱は、毎夕のヨーガ。
 仕事机を片寄せて、立位や座位のポーズを半時間ばかり継続しているうち、
 心理・生理両面に、一息吐ける間合いが生じてきたかのようだった。

 その間、猫のチビは、エアコンの冷気を吸収しやすいためだろう、
 私の机の上に丸くなっている。

 ヨーガの仕上げは、完全弛緩(死体)のポーズ。
 両手・両足を十分広げて、いわゆる大の字になり、
 身体の隅々まで、また呼吸へ意識を廻らして行く。

 ところが、そのときに当たってチビが、
 机から降りて私の左腕の付け根と胸との隙間に、
 はまり込むように身を寄せてきた。

 チビに限らずひとに聞いた話でも、
 猫はしばしばそういう位置・接触を好む――安堵感を覚えるらしい。

 私の方はと言えば、どちらかといえば窮屈。
 気持ちにゆとりを持てているときはまだいい、
 しかしそのときは、心身の弛緩を切に求めていたわけだから、
 その感は募る一方で、ほとんど居立たまれないところへまで来ていた。

 一旦身体を起こして、猫を他へ移し替えようとした刹那、ふと、 
 ――いや、これは、チビ本位の行動じゃないのかもしれない、
   猫と人という関係であれ、我々は友なのかもしれない、 と。
 ――すると、この情況下、私の方が彼から
   生気や慰撫を受け取っていいのかもしれない、 と。

 そうして、完全弛緩の10分間を持ち堪えられ、
 帰途、バイクを、常よりも迅速に走らせることさえできた。

 困惑事に、何ら解決の目途は立っていないが、
 ともかくもその日、パニックに陥らず踏み止まれたのは、
 ヨーガに加えて、チビの友情のお陰だと思える。

 文字通り、“猫の手を借り”たのだ。

パスワード  (ヘルプ)


    << 戻る