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〈二女をダシに・・・〉 引用
池見隆雄 2023/1/5(木)14:48:48 No.20230105135704 削除
 昨年12月30日、二女の〇回目の誕生日。
 ケーキにろうそくは立ててくれるな、と本人からの要望。
 彼女は、幼少早期から読書好きだったので、今回も、私からの主たるプレゼントは本。

 今回は二種、ジェーン・オースティンの『ノーサンガー・アビー』と・・・
 あと一冊がなかなか思い付かず、誕生日の4,5日前にやっと、
 セルマ・ラーゲルレーヴの『キリスト伝説集』に落ち着く。

 オースティンは、高校生のとき、私の蔵書の内から『高慢と偏見』に親しんで以来、
 彼女のお気に入り。
 昨年も、同作者の『マンスフィールド・パーク』を選んだ。

 ――仮に二女にとってそれらの作が既読だったとしても、
 忘れっぽいという素質に恵まれているので、
 ほぼ初見として楽しんで貰えるという安心感がある。

 ところで、ラーゲルレーヴといっても、ご存知の方は少数者かもしれないと思う。
 『ニルスの不思議な旅』の作者といえばお分かりだろうか?
 この作は、曾ての二女の最大の愛読書の一つで、現在も、その三冊本が、我が家の書棚に並んでいる。

 『キリスト伝説集』を選んだ動機の一方は、『ニルス・・』に基づく彼女の好尚への判断。
 もう一方は、私自身が、学生時代にそれを文庫で手に取ったときの、
 いまだに色あせない意外性と清々しさの入り交じる、独特の趣向の享受を、
 二女に引き継いで貰えればという、少なからぬ自分本位。

 なお、ラーゲルレーヴについて記せば、この人は、スウェーデン生まれの女流作家で、
 1909年度のノーベル文学賞の受賞者――初のスウェーデン人、及び女性ノーベル賞受賞者でもある。
 大変早熟な人だったらしく、10歳にして聖書全篇を読み抜いたという。
 垢抜けた装丁のキリスト教系の出版社から出ているその作の、
 読後感を聞かせて欲しいと二女に要請している。

 昨年9月下旬の私の誕生プレゼントとして、二女の方も、書籍を贈ってくれた。
 ナラティヴセラピーの入門書と、『言語の中動態・思考の中動態』。
 これらは、私の方からリクエストしたのだ。どちらも、私の仕事への参考書として。
 こちらへ貰う方はむろん、贈る方の書目も、
 私の場合、先に記したように、けっこう自分本位だ。
 それをやんわり受け止めてくれる鷹揚(おうよう)さが、彼女には具わっているようだ。

 彼女と愛犬のエル(トイプードル、7歳、男の子)、そして私たち夫婦とで、
 ときどき山歩きを楽しむ。
 ――彼女が、「エルも寿命の半分」と洩らしたことがある
   (エルのような小型犬の寿命は、15歳くらいと見込まれているらしい)。

 この日常的な一コマも、いつかは懐かしい思い出になる、
 そうに違いなかろうが、臆せずより真実へ目を転ずれば、
 今日この日、この一日への没頭にこそ、“永遠”が影を落とす。
 具体に即していわば、
 歳を重ねる(変化する)エルとともに、7年前、昨日、明日も、普遍の彼が存在する。
 ――存在することそのことが、私たち存在者の本質。

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