スピノザの影響も強く受けているフランスの哲学者アラン(1868〜1951)が、
その著作中に、スピノザの提言として、以下のようなことを書き付けている、
「情念をもたない人間などはいないだろうが、
ただ賢人の場合、その魂のなかで、幸福な思惟が厖大な拡がりをもっているので、
情念はみんな、まったく片隅に追いやられて小さくなっている。」と。
これはスピノザの意向をアラン自身の表現に直したものだけれど、
私はとても気に入っている。
位已光児さんも、このような位置におられる。
アランはまた別の個所で、スピノザの実践と思索を、「よろこびの達人」と形容する。
世界の平和は、私たちひとりひとりがこの達人を心掛けてこそ、
初めて可能になるのだろうと思う。
最後にもう一つ、アラン流のスピノザを、
「からだが暖まったからよろこぶのではなく、
私がよろこんでいるからからだが暖まるのだ」。
(引用は岩波文庫より。神谷幹夫訳)
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