みんなの広場「こころのパレット」

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〈お 宝@〉 引用
池見隆雄 2023/7/18(火)15:45:21 No.20230718153610 削除
 先週火曜日の午後2時過ぎ、協会事務局の温度計は、29.6度を示していた
 ――なるだけエアコンを入れたくないという、非現実的な私の拘りも奏効して。

 ふと、自宅のサスケ(手乗り文鳥)の、その日の境遇が思い浮かべられた。
 家内は、正午ごろから、「市民劇場」主催の観劇へ出かけていた。
 でなければ、協会の仕事を手伝ってくれた後、遅くとも午後4時過ぎには帰宅する。
 
 このシーズンに留守するとき、家内は、エアコンを27度に設定してリビングを冷やした後、
 他の部屋との境の板戸など閉め切って、
 扇風機の風が、軽くサスケを撫でるような按配を怠らない。

 その日も同様だろうと推測されたものの、
 友人たちと観劇へ出かけたとなると、帰宅は平生より大幅に遅れるのが常であったし、
 午後4時過ぎでさえリビングの室温は30度を超えている事実を、
 これまで既に何度か家内自身が確認していたから、まして・・・と私には、
 夕刻までのサスケの無事がとても危ぶまれた。

 観劇中と承知しながら、ラインで、「サスケ、大丈夫かな?」 と打診してみたが、
 それでこちらの心中の動揺が鎮まるわけでなし、
 どうせならと机の前から立ち上がる。

 日盛りのアスファルト道をバイクで走っていると、
 何かの焦げつくような臭気が鼻をついた。
 その刺激によって更に危機感が煽られ、ハンドルを握る手に力が入る。

 玄関からの廊下とリビングとを隔てている、6つに区画されたはめ殺しガラスのドアの手前から、
 サスケの鳴き立てるのが聞き取れてまずは安堵の吐息がもれる。

 籠の前面の餌箱の上へ来て、「出して」と求めてやまない彼女に敢えて取り合わず 
 (一旦、放してやると、直ぐには元へ戻るのを肯じないので)、
 視線を走らせた温度計の数値は、29.6度と協会のそれに等しい。

 扇風機の律儀な首振りの送風には休んでもらい、エアコンを入れる。
                        (続く)

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