みんなの広場「こころのパレット」

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〈お 宝A〉 引用
池見隆雄 2023/7/19(水)15:29:32 No.20230719145028 削除
 私自身のために、冷水をコップに2杯あおり、
 キッチンに見出したバナナを1本。
 さて、籠の前に屈み込んでサスケと目を合わせ、
 「オカアさんが帰ってくるまで待っとくんだよ」と。

 20分余の行程を、協会へとって返す。
 心なしか、往きよりも、暑気が和らいでいる。
 午後5時前、家内から、ラインが入った、
 「サスケのために、エアコンのスイッチを入れに帰ってきてくれて、ありがとう」。

 私の想定より、早めの帰宅が可能だったらしい。
 始めは狐につままれながら、幾つかの兆候から、私の行動の結果と察知したのだ。
 「お宝お嬢ちゃんだからね」と返信する。

 それからまた10分ほどして、サスケの写真とともに、
 「お蔭で元気、ありがとうって言ってるよ」。
 サスケの目の表情がいかにもそれらしく判断されたところで、
 思いがけず熱いものがこみ上げて来そうになり、慌てて画面から目を逸らす。
 その熱いものはしかし、必ずしも、
 サスケの表情に根拠を置いているのではないように憶測される。

 やがて自ずと思い廻らされたのは、
 サスケ(文鳥)の形を取った“存在”そのものに、
 微かにであれ触れ得たのではなかったかと。

 エンカウンター・グループを続けて来られたのも、
 これからも能う限り続けようとしているのも、
 参加の方たちとの間で、そういう瞬間があればこそと思う。
 その触感を情調の側面から窺うとすれば、
 無条件の喜び、及び思い遣りであるだろう。

 “存在”そのものへの触知というお宝中のお宝を、
 サスケが返礼としてもたらしてくれたのだ、と思いなして、
 この小文の題名を〈お宝〉としたのだった。
                     (終わり)


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