ヒルデガルト・フォン・ビンケンはハーブティーの始祖でもある。
八百種以上のレシピを残したという。
それに基づいた有機栽培のティーを、オーストリアの生産者から取り寄せてみた――。
「女性のための」、「温まる」、「力の出る」などと銘打った5種のティーバックアソート。
市販のそれらより格段に味わい深く、その分、効能も期待できそうだ。
紙の容器に、机へ向かって書き物をしている、修道服姿のヒルデガルトの絵が添えられているが、
それを眺めているうち、もう何十年も前、どこかのエンカウンター・グループに参加したとき、
主催者が参加者向けに調える茶菓子のひとつに見掛けていたことが、おぼろに思い出された。
当時はハーブへ無関心、勿論ヒルデガルトとは無縁で、
にも拘らずその絵姿が印象付けられていたのは不思議な気もされる。
私は青年期から、グレゴリオ聖歌を始め宗教曲へも、クラシックの他のジャンルに劣らす親しんできており、
そういう経緯も手伝ってヒルデガルトの作曲へ強く惹かれたわけだが、
それに加えるに、青年期以前から修道、清貧、孤独といった処し方へこれという必然もなく憧憬の念を抱いており、
ヒルデガルトの修道服姿がその念へ反映されでもしたろうか?
ヒルデガルトの曲を聴いていると、健常とは言い兼ねる左耳の聴力が、
前のスレッドの表現を採用すれば、宇宙の秩序に感応して復元されるようでもある。
また、彼女のお陰で、改めて宗教曲への馴染みが深まり出し、
例えば、購入していながら長らく未聴のままに放置していた、16世紀イタリアの作曲家、モンテヴェルディの大作、
『聖母マリアの夕べの祈り』などへ手を伸ばしかけている昨今から推して、
何かと頑固な私も、ハーブと音楽とを同時に味わうという新たな習慣へ導かれないとは限るまい。 |