旅先で寅さんがバイをしていそうな商店街とか、神社とかを見つけると、寅さんに会いたくなる。北恵那鉄道は、廃線跡の鉄橋が背後にそれとなく映っていて、分かる人だけがニヤッとするシーンだ。寅さんが乗ったであろう遊覧船のり場はすでに閉鎖されていて、寅さんが上り下りしたであろう道は、荒れていた。愛されている男はつらいよも、まとめて見ると、こんな人が親戚にいたら大変だよなと、つくづく思う。僕にはそれに近い叔父さんが一人いた。姉である母に怒られるのがこわくて、アルコールで酩酊してからいつもうちに遊びに来て絡まれた。それが嫌で、来ても部屋に閉じこもって挨拶程度しかしなくなった。今から思えば、失礼なことをしたと思う。それでも叔父さんは、僕に一生懸命話しかけてくれたっけ。そんな叔父さんも、寅さんと同じように、ある日突然天に召されてしまった。失礼を詫びたいと思う気持ちが、今も寅さんに会いたいという思いと重なって去来する。好きなように生きてきて、人生の終着駅が見えてきた。そして探していた寅さんと僕のおじさんの姿は、実は鏡に映った自分でもあったことに、やっと気づいた。
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