このモノクロのカットは成田鉄道のSLで、昔の書籍に何度か掲載されていたカットです。私の軽便ヒストリーは後手後手で後悔ばかりだったのは、前述しましたが、いつもこんな1カットだけでよかったから撮りたかったと、いつもため息ついて見ていたのが、この写真でした。なんの変哲もない編成写真ですが、何故かこのカットが大好きだったのです。
9号機のお披露目の日は、もう日の暮れかかる夕刻で、調子が悪ければやらないという話が出てました。冬の日差しで、もう影がみるみる伸びてきて、順光で撮れるのはわずか。もう早く早くと焦って待ったのを覚えております。そして撮れたカットは、斜光線悩ましく、まるで成田鉄道のそれを連想させるカットでした。計り知れないほどの喜び。こんなカットを撮りたくて、ずーっと果ては海外まで探し求めた風景。大きく大きく回り道をして、やっとここで押さえることができたわけです。それも客車は井笠の客車で、穴のあくほど眺めた写真は、ここから程ない距離の成田鉄道のものでした。不思議な縁に導かれ、私の軽便道はかつてない充足感に包まれ、これで一区切りついたんだと思いました。
このあと9号機は、「満足した???」と言わんばかりに、さらに改造され、ボイラーまで変わって、ヨーロッパ風の姿に変わってしまいました。まさに、逃したらまた迷走するところでした。いまはとても穏やかです。あの頃は、こんな気分で締めくくれるとは、とても思いませんでしたもので・・・。
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